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7. 戸部良一・寺本義也・鎌田伸一・杉之尾孝生・村井友秀・野中郁次郎『失敗の本質』

今から70余年前、日本は十五年戦争に負けた。ではなぜ敗戦したのか。資源の不足、無謀な開戦、兵站の軽視、米国の陰謀など、様々な理由が現在に至るまで語られてきた。たしかにこれらの説明はそれぞれ納得できる部分があろう。しかし本書では失敗の本質をあえて、日本軍という組織に求めようと試みる。

 年の数え方にはその国のあり方が反映されている。我が国は古来より、他の漢字文化圏の国々と同じように元号が用いられてきた。また神武天皇の即位したとされる年を元年とする皇紀何年という紀年法も明治から敗戦まで使われていたことから、日本が天皇中心の国家であり続けてきたことが窺える。
 ところで、神武天皇即位紀元とバトンタッチするようにして戦後広く普及した紀年法として、西暦がある。これはイエス・キリストが生まれた翌年を元年(紀元)とするものであるが、明治になって西洋を見習えということになってから徐々に用いられるようになり、第二次世界大戦後に一般化したようだ。
 以上のように、現在の日本で使われる紀年法は元号と西暦であるが、実はもう一つあるのではないか。「戦後」という年号が。
 今年は戦後72年である。しかし巷では未だに先の大戦の話をしている。朝鮮の従軍慰安婦、南京大虐殺、首相の靖国神社参拝等々。また米軍基地問題や領土問題、昨今話題になりつつある核兵器保有問題など、国の安全保障に起因する問題の多くは先の大戦の結果に起因している。つまり私たち日本人は戦後ずっと大東亜戦争のことを議論し続け、これからも当分は敗戦国の民であることを前提として政治を考えなくてはいけないのである。そのような意味で私たちはアジア・太平洋戦争についてよく学ばない限り、現在の状況の多くを理解できないし、またこれからのことを実質的に考えることもできないのである。
 今回取り上げる『失敗の本質』は、旧日本軍の組織が実際の作戦でどう機能したのかについて、特に失敗した作戦の結果を研究・分析し、戦中から戦後にかけて変わることのない日本の組織の弱点について考察し、それに対する処方箋を出している。

目次

序章 日本軍の失敗から何を学ぶか
一章 失敗の事例研究
 1 ノモンハン事件――失敗の序曲
 2 ミッドウェー海戦――海戦のターニング・ポイント
 3 ガダルカナル作戦――陸戦のターニング・ポイント
 4 インパール作戦――賭の失敗
 5 レイテ海戦――自己認識の失敗
 6 沖縄戦――最終段階での失敗
二章 失敗の本質――戦略・組織における日本軍の失敗の分析
三章 失敗の教訓――日本軍の失敗の本質と今日的課題

書誌情報

『失敗の本質 : 日本軍の組織論的研究』
著者:戸部良一・寺本義也・鎌田伸一・杉之尾孝生・村井友秀・野中郁次郎
発行者:大橋善光
発行所:中央公論新社
1991年8月10日 初版発行
印刷:三晃印刷
製本:小泉製本
ISBN:978-4-12-201833-1

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