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13. ラッセル『哲学入門』

目の前のテーブルの本当の色や形を知ることはできるのだろうか。  あけましておめでとうございます。もう平成も30年になってから2ヵ月以上が経ってしまった。今日は東日本大震災からちょうど7年経った3月11日。復興が着々と進んでいるとの報道があるが、皆さんはいかがでしょうか。  私は年末から年始にかけて少し時間があったので、哲学に熱中していました。特に認識論と心の哲学、様相論理学、ドイツ観念論です。アリストテレスのカテゴリー論や実体論も少しだけかじった。それらの成果の一端を、何回かに分けてお見せしたいと思っている。 〈理性的な人なら誰にも疑えない、それほど確実な知識などあるのだろうか。この問いは、一見難しくなさそうに思えるが、実は最も難しい問題の一つである。〉(9頁) 目次 第1章 現象と実在 第2章 物質は存在するか 第3章 物質の本性 第4章 観念論 第5章 面識による知識と記述による知識 第6章 帰納について 第7章 一般的原理の知識について 第8章 アプリオリな知識はいかにして可能か 第9章 普遍の世界 第10章 普遍に関する私たちの知識 第11章 直観的知識について 第12章 真と偽 第13章 知識、誤謬、蓋然的な見解 第14章 哲学的知識の限界 第15章 哲学の価値 書誌情報 『哲学入門』 The Problems of Philosophy 著者:バートランド・ラッセル Bertrand Russell 2005年3月10日 第1刷発行 First published 1912. Second Edition 1998. 訳者:高村夏輝 発行者:熊沢敏之 発行所:株式会社 筑摩書房 印刷所:三松堂印刷株式会社 製本所:三松堂印刷株式会社 ISBN:978-4-480-08904-7 関連書籍 戸田山和久『知識の哲学』 プラトン『テアイテトス』

10. プラトン『パイドン』

魂は不死である。知を愛する者だけが、肉体と魂が分離したのちに神々と交わり真理を得る。ゆえに真の哲学者ならば、死を恐れるのでなくむしろ死を求めるのである。  ぼくが思想的に最も影響を受けた人はプラトンである。プラトンとの出会いは高校で倫理の授業を受けたとき。この倫理の授業は大変ワクワクした。生と死について、社会や国家について、自然や世界の真理について、子どもの頃から自分ひとりで考えていたことが、歴史上多くの人も考えていて、世の中はおもしろい考え方に溢れていることを知った。  それから大学に入り時間ができて、プラトンの著作に手を出すと止まらなくなった。『ソクラテスの弁明』『饗宴』『プロタゴラス』『国家』などの対話篇を読み漁った。ただ哲学は専門ではなかったので、理解のほどは大変怪しいが。  プラトン(紀元前427年-紀元前347年)は、人類の文化に多大な影響を与えた者のうちでも、最大の人であった。彼は老年のソクラテスに感化され哲学の道を歩むことになり、師ソクラテスの学究方法である対話の形式で数多くの著作(対話篇と呼ばれる)を残し、その中においてイデア論をはじめとする様々な学説を唱えたことは、広く知られていることである。また、彼がアテナイ郊外に学園アカデメイアを開設したことや、何度かシケリアに旅行して知的な交流を行ったこと、シュラクサイの政治家ディオンと交友し政治的な期待を寄せていたこと、彼の著作は現在主に初期・中期・後期の3つに分けられてしばしば論じられることなど、彼を知る上で述べるべき事柄は少なくない。ここでは彼の主要な学説である想起説とイデア論について、『パイドン』での議論を確認してみよう。  『パイドン』の概観はこうである。まず本著作は、プラトン独自の思想・哲学が展開され始めたとされる中期対話篇に分類される。場面設定は、ソクラテスの刑死の当日の昼に行われた議論について、パイドンがそのときをふり返ってエケクラテスに語るという形式となっている。副題は「魂について」であり、内容は死に際して魂(プシュケー)が不滅であることをソクラテスが証明していくというものである。証明は大きく分けて3つ、あるいは4つ示される。その中の一つに想起説による証明があり、また別にイデア論を用いた証明も述べられる。  想起説とは何か。それは、学習とは想起(アナムネーシス)であり、〈もし...

8. 柳沼重剛『ギリシア・ローマ名言集』

教養がある人とはどのような人か、という問いには様々な答えがある。ある者は古典文学や芸術、歴史について博識であることだと言う。またある者は品位や人格が優れていることだと言う。いずれにせよ教養人と見られるために多く用いられるのが、昔の作家や政治家や思想家といった有名人たちのことばである。そしてとりわけ欧米人にとっては、古代ギリシア・ローマの名言が重要であり続けた。  本書では、ギリシアとローマの337の名句について、出典や解説を付して紹介されている。前半をギリシアの部、後半をローマの部として、それぞれの名言に見出しをつけて五十音順に並べてある。ぜひ通読することをおすすめしたい。  私の気に入った格言を5つだけ書き留めておこう。 〈〖うまれないこと〗 4 人間にとっては、生まれぬこと、太陽の光を見ぬこそよけれ。 バッキュリデス『祝勝歌』第五番160〉(12-13頁)  少し病んでいるかもしれないが、感受性豊かな人は共感できる名言だと思う。齢を重ねていくと生をより肯定していき、生の終わりが近くなると逆に死を肯定するというのが、一般的な人間の死生観の変遷だと思う。しかしこれとは別に、「生まれぬこと」は幸福でありよきことであるという考えも、洋の東西を問わず存在し続けて来た。ただバッキュリデスの時代以降、ギリシアやローマ、ヨーロッパ諸国、アメリカでは、生死の議論は退いて、知の主軸はもっぱら死後の救いの話や現世でのあり方、物理世界の解明などの方向へ移っていったが、インドでは生死や苦の感覚を基に、仏教理論を発展させ、改変されながらも中国、朝鮮を経て日本へと渡来した。ところが欧米と同じく現在の東アジアでも、生死についての話題は主流ではない。 〈〖たえる〗 68 現在の難儀もいつの日かよい思い出になるであろう。 ホメロス『オデュッセイア』第十二歌212(松平千秋訳)  海上を放浪するオデュッセウスの一行が、一難去ってまた一難とつづくので、兵士たちが心身ともに疲れ果てて、絶望状態に陥ってしまったとき、オデュッセウスがこう言って彼らを励ます。〉(46頁)  いつか言ってみたいセリフだ。 〈〖きょう〗 49 (今日という)日を摘み取れ。 carpe diem. ホラティウス『詩集』第一巻11.8〉(105頁)  ロビン・ウィリアムズが...