スキップしてメイン コンテンツに移動

15. 翁長雄志『戦う民意』

沖縄には戦後日本が抱える多くの問題が詰まっている。国と地方、大和と琉球、戦勝国アメリカと敗戦国日本……。とりわけ沖縄の基地問題について多くの人が考えることは、日本の民主主義の成熟につながるのではないだろうか。

今年は、非常に多くの著名人が亡くなったように感じる。亡くなった順に、私の知る範囲で挙げると、西部邁、大杉漣、スティーヴン・ホーキング、高畑勲、西城秀樹、樹木希林、小田裕一郎等々。その中の一人に前沖縄県知事の翁長雄志がいる。

私が彼の本と出会ったのは少し不思議だ。今年も8月に入り、日曜日になんとなくブックオフに入って、翁長雄志の『戦う民意』を見つけた。私は沖縄の問題を知らなければならないと思いつつ、今まで遠ざけて来たように感じ、なぜか急に向き合わなければならないという責任感に苛まれ、そのままレジに向かったのだ。そして帰宅後すぐに読み始め、ちびちびと毎日読んでいた3日目の夕方、著者の訃報を聞いたのだ。何かこれは深い因縁のようなものを感じてしまう。

それはさておき、『戦う民意』について。
この本は、他の政治家の本と同じく、翁長前知事自らの考えや出自について記されている。
沖縄の保守派の政治家の家庭に育ち、自らも保守系議員として那覇市議会議員から政治の道を歩み始めた。そして2014年に沖縄県知事に選出された。

このとき、翁長雄志は分断した沖縄を辺野古新基地建設阻止によって一つにしたいと考え、「オール沖縄」をスローガンに掲げて選挙戦に挑み、知事選挙を圧勝した。
その後は官邸へ辺野古反対の要望をしに行ったり、4度の訪米で米国政府に直接辺野古新基地建設を止めるよう訴えたりした。

さて、ここで沖縄の基地問題の歴史を振り返ってみたい。

コメント

このブログの人気の投稿

2. 立花隆『政治と情念』

角栄を奪い合う二人の女、眞紀子と佐藤昭。田中眞紀子とは何だったのか。佐藤昭とは何者か。田中角栄とは――。  日本の戦後政治は、ほぼ自由民主党に牛耳られてきた。いわば、ブロンデルのいう「優越政党を伴う多党制」、あるいはサルトーリのいう「一党優位政党制」である。  その戦後日本政治で絶大な存在感を示すのが、政治家・田中角栄である。  角栄は何をしたのか。  彼は、日本の総理大臣になった――。  最終学歴は高等小学校卒業(夜間の専門学校である中央工学校も卒業しているが、庶民アピールの意味も込めて高小卒としていた)でありながら、1957年に39歳で郵政大臣、62年に44歳で大蔵大臣、65年に自民党幹事長、71年に通産大臣に就任し、そして72年、54歳で総理大臣にまで上り詰めた。  宰相の地位に就くために、角栄はカネの力を存分に利用した。立花隆によると、72年総裁選の多数派工作のために使った総額は80億円だそうだ。その際、自身の政治資金団体で集めたお金の他に、保有不動産の売却、例えば東京電力に柏崎刈羽原発用地を売却するなどして、莫大な政治資金を捻出した。  興味深いのは、のちに首相になる中曽根康弘もこの総裁選への出馬を予測されるも、日中国交回復を果たすことを条件にいち早く田中支持にまわり、結果角栄を勝利に導いたのであるが、その際に7億円で買収されたのではないかということだ。中曽根は自身の回想録で、その際の金銭の授受を否定するも、立花は、7億円という金額はともかく、カネを全く貰わなかったというのはありえないという。そしてこの貸し借りは10年もの歳月を経て、82年総裁選に、角栄の支持を得て予備選を勝ち抜いた中曽根が総理の座に就くことで清算された。  コッポラの映画『ゴッドファーザー』では、冒頭にマーロン・ブランド扮するドン・コルレオーネに願い事を頼みに来た男が、お返しにいつか頼みを聞くという約束をして、何十年か経った後、「約束」を果たすためライバルのマフィアの親分の襲撃に加わり死んでいく。 「政治における借りと貸しの清算は、この話に近いところがあるんです。すぐには清算はせまられないが、何年も何十年もたってからせまったりせまられたりするということです。」(140頁)  彼は、日本を土建国家にした――。  角栄といえば、『日本列島改造論』を挙

9. リンカーン『リンカーン演説集』

誰しもが偉人と認めるリンカーン米大統領。彼の偉大さは、貧しい出自から努力して大統領にまで上り詰めたことのみならず、南北戦争という国難の克服や奴隷の解放を成し遂げたことにある。政治や国家、リーダーシップについて想う際、アメリカ大統領の原像としてのエイブラハム・リンカーンのことばを振り返ることは、いつまでも有用であり続けるだろう。  トランプが新たにアメリカ大統領になってから8ヶ月が経とうとしている。その間には様々な出来事があった。TPPからの離脱、イスラム諸国からの入国制限、アサド政権へのトマホーク攻撃等々。近頃は朝鮮半島の危機が続き、トランプも圧力をかけてはいるものの北朝鮮の核・ミサイル開発が一段落してしまい、国際世論は対話・平和路線、つまり北の核兵器保有容認の流れになりつつある。日米はこの流れに抗うことはできないだろう。  時評はさておき、トランプの所属する共和党で初の大統領であるリンカーンの話をしよう。彼といえば、奴隷解放宣言や「人民の、人民による、人民のための政治」と言ったゲティスバーグ演説が有名である。ただリンカーンといえばコレといった、教科書的脊髄反射的な答えを述べればよいといった理解ではなく、その背景を少し確認してみたい。 ジョージ・ピーター・アレクサンダー・ヒーリー 画, Abraham Lincoln , 1869年  リンカーンの主要な業績は奴隷解放であるが、アメリカ合衆国の奴隷制度は、白人がヨーロッパから渡ってきた直後から始まった。白人入植者たちはインディアンを殺害するなどして追っ払い、やがて植民地であることに嫌気がさして、ついにイギリスに対する独立戦争(革命)を始める。そして1776年にアメリカ独立宣言を行うが、その中で「われわれは、以下の事実を自明のことと信じる。すなわち、すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられているということ」と謳った。この「すべての人間」の範囲について、白人の他に黒人も含めるのかどうか議論の的になった。  リンカーンは言う。「われわれの国家(ガヴァメント)が建設された折には奴隷制度が布かれていました。われわれはある意味で奴隷制度の存在を黙認せざるをえませんでした。一種の必然であったのです。われわれは戦争を経、しかるのちに自

1. つんく♂『「だから、生きる。」』

ぼくは、つんく♂の作る曲が大好きである。乙女チックな日常と、地球、宇宙、世界、人生、平和、歴史、愛とが繋がっている歌詞。たとえそれがいくらデタラメでも、自在に操られたメロディーとリズムとハーモニーで、たちまちつんくワールドへ吸い込まれてしまう。  2015年4月4日、母校・近畿大学の入学式にサプライズとして現れたつんく♂は、喉頭がんの手術で声帯(喉頭)を全摘し、声を失ったことを初めて明かした。このニュースはテレビや新聞などで大々的に取り上げられ、ぼくもその日のNHKニュースですぐに知り、衝撃を受けた記憶がある。  つんく♂といえば、シャ乱Qのボーカルで、彼がプロデューサーとして手掛けたモーニング娘。などのアイドルが、今世紀初頭に一世を風靡したことは、現在20代以上の日本人なら誰もが知っていることだろう。  そんなつんく♂が、2014年の10月に声を失ったのだ。なんという悲劇。あんなに歌にこだわりを持っていたつんく♂が、もう永遠に歌えなくなるとは。  本書は、つんく♂が2014年の2月に喉頭がんの診断を受けてから、トモセラピーによる放射線治療、分子標的薬による抗がん剤治療、完全寛解(かんかい)宣言、喉頭全摘手術、近畿大学入学式までの一連の過程について記されている。同時に、1992年の上京からモーニング娘。の誕生、ハロー!プロジェクトの発展、井出加奈子との出会いから結婚、父親になり子育てに勤しむ様子など、彼の前半生が笑いあり涙ありで綴られている。ハロヲタ(ハロプロのファン)ならぜひ一読すべき内容だろう。  そういうぼくもハロヲタの一人なのだが、本書で見つけた興味深いエピソードをいくつか紹介しよう。  まず一つ目は、スマイレージ(現・アンジュルム)のインディーズ3rdシングル「スキちゃん」の歌詞について。結婚して子どもを持ったつんく♂は、「妻は家を守って」という守旧的なスローガンから「ジョンとヨーコみたいに」へと、子育てに積極的に関わり家族との時間を増やすという「人生レボリューション!」を果たした。それから「たまの休日にフードコートでラーメン食って、スーパーで買い物してポイントためるのも、実はロックじゃないか! といつの間にか思うようになっていた」(156頁)らしく、「フードコート」という言葉が歌詞に入ったとのこと。またモーニング娘。の「気まぐれプリンセ